代表取締役が不在・不測の事態になったら?「仮取締役」と「職務執行停止」の実務
2026年9月22日更新
会社の経営を牽引する代表取締役が、突然の病気や事故で意思能力を失ったり、死亡や辞任によって不在となったりした場合、会社機能は即座にストップしてしまうおそれがあります。また、経営権をめぐる内部対立から、代表取締役の解任や業務停止が問題となるケースも少なくありません。
今回は、こうしたスクランブル態勢(不測の事態)において会社を麻痺させないための法的手続きである「仮取締役」の選任と「職務執行停止」の実務について解説します。
■ 経営陣が欠けた時の救済策「仮取締役・仮代表取締役」
取締役や代表取締役が死亡・辞任などで欠けた結果、法律や定規で定められた「最低限必要な人数」を満たさなくなった場合、そのままでは株主総会の招集や重要取引の決済を行うことができません。
通常は株主総会を開いて後任を選出しますが、総会を開催する権限を持つ代表者自体が不在の場合、後任選びすら進まなくなるという悪循環に陥ります。
このような事態を解決するため、裁判所に申請して暫定的な役員を選んでもらう制度が「仮取締役(仮代表取締役)」
の選任手続きです(会社法346条2項)。
利害関係人(株主や取締役、取引先・金融機関など)からの申し立てにより、裁判所が一時的に業務を行う仮役員を選任します。仮役員には、弁護士などの専門家が選ばれるのが一般的です。
■ 内部対立や不正の発生時「職務執行停止の仮処分」
一方、代表取締役が在任してはいるものの、「著しい不正行為があった」「取締役会の決議なしに勝手に代表を名乗っている」といった理由で、経営権をめぐるトラブルが生じることがあります。
この場合、そのまま業務を続けさせると会社に重大な損害が及ぶため、裁判所に申し立てて
このような事態を解決するため、裁判所に申請して暫定的な役員を選んでもらう制度が「職務執行停止の仮処分」を求めることになります。
職務執行停止が認められると、裁判所は同時に「職務代行者」を選任します。職務代行者は、会社の日常的な業務(通常業務)を行う権限を持ち、会社の混乱を最小限に抑える役割を担います。
■ 金融機関や取引先への影響と実務上の注意点
金融機関や取引先の皆様にとって、融資先・取引先でこうした手続きが発生した場合、以下の点に注意が必要です。
- 登記事項証明書への記載:仮取締役の選任や職務執行停止・職務代行者の選任は、商業登記簿に登記されます。取引の際は、現在の代表権が誰にあるのかを登記簿で確実に確認することが重要です。
- 権限の範囲の確認:仮取締役や職務代行者が行える業務は、原則として「日常の通常業務」に限られます。不動産の処分や大幅な事業変更など、重要な取引を行う場合は裁判所の許可が必要となるケースがあります。
■ おわりに
経営者の不測の事態や内部トラブルは、予期せぬタイミングで発生します。当事務所では、事前のアクシデント対策(遺言や家族信託、種類株式の活用など)から、万が一の緊急時の法的手続きまでサポートしております。経営体制や役員変更に関するお悩みは、お気軽にご相談ください。