成年後見制度の「見直し(法改正)」に向けた動向~使いづらさ解消へ~
2026年9月10日更新
高齢化が進む中、認知症などで判断能力が低下した方の財産を守る「成年後見制度」。金融機関の窓口やご家族のご相談でも登場する制度ですが、一方で「一度使うと死ぬまでやめられない」「使い勝手が悪い」といった不満や使いづらさが長年指摘されてきました。
こうした声を受け、現在、国(法制審議会)では成年後見制度の抜本的な見直し(法改正)に向けた議論が大詰めを迎えています。今回は、見直しのポイントと、金融実務や今後の資産管理に与える影響について解説いたします。
■ なぜ今、成年後見制度が見直されるのか?
現行の法定後見制度は、本人の財産を「減らさないように守る(保護)」ことに主眼が置かれています。そのため、以下のような問題点が強く指摘されていました。
- 原則として終身利用:本人の能力が回復しない限り、死亡するまで制度を利用し続ける必要がある。
- 柔軟な財産活用の制限:本人のための資産運用や実家の売却、家族への資産承継などが難しく、財産が「凍結」された状態になる。
- 報酬の継続的負担:司法書士などの専門職後見人が選任された場合、死亡するまで月額報酬の支払いが続く。
これらの使いづらさから制度の利用が進まず、結果として「認知症による口座凍結」などの課題が放置される原因となっていました。
■ 検討されている「抜本的見直し」の主なポイント
今回の見直し論議では、本人の権利擁護と使いやすさを両立させるため、以下のような画期的な見直し案が検討されています。
- 「利用期間の限定」や「必要な時だけの利用」 「終身利用」を原則とせず、「遺産分割協議を行う間だけ」「不動産を売却する間だけ」といったように、特定の目的が達成されたら後見を終了・見直しできるようにする仕組みです。
- 本人の意思尊重と柔軟な財産活用 単に財産を保護・維持するだけでなく、本人の希望や生活の質(QOL)向上のために、より柔軟に財産を活用・運用できるようにする方針が打ち出されています。
- 後見人の交代・解任要件の緩和 「後見人との相性が悪い」「最初の手続きが終わったので家族管理に戻したい」といった場合に、後見人の交代や辞任を柔軟に認められるよう改善が検討されています。
■ 金融実務や一般のご家族への影響
この法改正が実現すると、金融機関の窓口対応やご家族の対応にも変化が生じます。
- 金融機関実務への影響: これまでは「後見人がついたら、すべての取引は後見人を通じて行う」という画一的な対応が中心でした。今後は、「特定の取引時のみ後見人が関与するケース」や「期間限定の後見」が増えることが予想されるため、窓口での確認作業や権限確認の実務がより柔軟かつ綿密に求められることになります。
- 一般のご家族への影響:「一度後見人をつけると後戻りできない」という心理的ハードルが下がり、必要なタイミングで安心して制度を利用できるようになります。また、必要性がなくなれば途中で終了できるため、利用者の経済的・精神的負担が大幅に軽減されます。
■ おわりに
法改正の施行まではもう少し時間を要しますが、国の方針は「利用者の視点に立った使いやすい制度」へと大きく舵を切っています。
成年後見の需要は増加傾向ですので、動向を見守っていきたいと思います。