“会社の株”誰が持っているか知っていますか?相続トラブル防止のための株式管理
2025年7月10日更新
中小企業の経営者の方とお話ししていると、「うちの会社の株は全部自分が持っているから大丈夫」とおっしゃる場面によく出会います。しかし、いざ登記簿や定款、株主名簿を確認してみると、意外なことが判明するケースが少なくありません。たとえば、「先代の名義のままになっている」「実は兄弟姉妹で分けて持っていた」「株主名簿がそもそも整備されていなかった」といった具合です。
株式は、会社の「所有権」に関わる非常に重要な権利です。誰がどれだけ株を持っているかによって、会社の意思決定(例えば取締役の選任や定款の変更)に直接的な影響を及ぼします。したがって、株式の所在や名義があいまいなままだと、後々、経営や相続の場面で深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。
特に問題となるのは、会社の代表者が株を多く保有したまま亡くなった場合です。仮にその代表者が全株式の過半数、あるいは3分の2以上を持っていたとすれば、その株式が誰に承継されるかによって、会社の運命が大きく変わることになります。ところが、遺言がなかったり、相続人間での話し合いがまとまらなかったりすると、その株式の帰属が確定せず、議決権が宙に浮いてしまうことになります。
こうなると、株主総会が開けなかったり、取締役の改選ができなかったりといった問題が生じ、会社の運営が一時的に停止状態に陥る可能性すらあります。特に、後継者がすでに決まっていても、株式の名義が変わらないままでは、形式的にはその後継者に発言権がない状態が続くことになります。
また、複数の相続人が法定相続分に応じて株式を共有する形になると、さらに厄介です。会社と無関係な家族が議決権を持つことになれば、経営判断に支障をきたすこともあります。場合によっては、「自分は会社には関わりたくないから株を買い取ってほしい」と主張する相続人が現れたり、「自分の意見が通らないのはおかしい」と経営方針に異を唱える人が出てきたりすることもあります。
こうしたリスクを避けるためには、まず「現状の株主構成を正確に把握すること」が第一歩です。株主名簿を整備し、誰がどのくらいの株式を保有しているのかを明確にしておくことが重要です。もし、株主がすでに亡くなっている場合は、相続人への名義変更を早めに行うべきです。
その上で、将来のトラブルを予防するには、「遺言の作成」や「事業承継の計画的な準備」が欠かせません。たとえば、後継者に株式を集中させるために、生前贈与を活用する方法もあります。また、会社法の制度を活用して、種類株式を発行したり、株式譲渡に制限を加えるなど、承継しやすい仕組みを整えておくことも有効です。
特に近年は、事業承継に失敗したことで企業が廃業してしまう例も少なくありません。後継者の確保だけでなく、株式の承継も含めた「経営の引き継ぎ」の準備を早めに行っておくことが、会社の将来を守ることにつながります。
株式は、単なる紙切れではなく、会社の経営権と財産権を象徴する極めて重要な資産です。「誰が株を持っているのか」「誰に承継させたいのか」「今の名義が実態と合っているのか」。こうした点を見直し、早めに手を打っておくことが、経営者自身にとっても、家族や従業員にとっても、安心できる将来を築く第一歩となると思われます。