遺言書を作っておいた方がいいケース
2024年11月13日更新
Q 元気なうちに終活をしておこうと考えています。
遺言書を作っておいた方がいい場合があると聞いたのですが、どのような場合でしょうか?
A 私たち司法書士が相続業務を行う上で、「お亡くなりになる前に遺言書を作っておけば、こんな争いは起こらなかったはず」と思うことがあります。
作成をためらったり、時間が掛かったりしているうちに、お亡くなりになったり、認知症になってしまい遺言書を作れなくなってしまうこともありますので、下記のケースにあてはまる方はお元気なうちに作成することをおすすめします。今回は「遺言書が無いことによって、争いが起こりやすいケース」をいくつかご紹介します。
夫婦間に子供がいないケース
夫婦の間に子供がいない場合、残された配偶者と義理の父や母、もしくは義理の兄弟姉妹が相続人になるため、全員で遺産分割協議を行う必要があります。もし、兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子(甥姪)も遺産分割協議に参加することとなります。そのため、例えば夫が亡くなり、夫名義の自宅や預金を妻名義に変更するには夫の両親または兄弟(または甥姪)の同意が必要になってしまいます。
あまり交流が無い場合や関係が良くない場合は、遺産分割でもめる可能性が高くなってしまいます。
このような状況を回避するために「妻(または夫)にすべての財産を相続させる」旨の遺言書を作っておけば、配偶者だけで相続手続きを進めることができます。
内縁関係の人がいるケース
事実上の夫婦ともいえる関係であっても、内縁のパートナーには相続権がありません。
法律上の婚姻関係があれば必ず相続人になれますが、内縁関係のままでは遺産相続に関われないため、財産を遺したいときは遺言書の作成など何らかの対策が必要になるでしょう。
前妻との間に子供がいるケース
離婚した相手との間に子供がいる場合、こちらに親権がなく、かつ何十年と音信不通の状況であったとしても、その子供は相続人の一人になります。
そのため、再婚の場合、現在の配偶者と(再婚者との間に子供がいる場合はその子供も含む)離婚した相手との子供との間で遺産分割協議を行わなければなりません。
相続人同士の関係を考えると、遺産分割協議で揉める可能性は非常に高いと言えるケースでしょう。
「自宅は配偶者に、預金の一部を前妻の子に相続させる」というような内容の、生活状況を考慮した遺言書を残すことで争いを回避することが可能です。
相続人がいないケース
亡くなった人に配偶者や子、父母、兄弟などの相続人がいない場合、相続財産清算人が選任され生前に同居していたなどの特別縁故者がいなければ、その遺産は国に帰属することになります。
遺産を国が取得することを避けるには、遺言書を作成しておく必要があります。遺言書を作成することにより、お世話になった方や、法定相続人ではない仲の良い親族、慈善団体に遺産を渡すことができます。