成年後見人が出来ないこと
2024年10月16日更新
Q 遠方に住んでおり、認知症が進んでいる母のために、母の近くの司法書士に成年後見人になってもらいました。
預貯金、年金などの管理、社会保障関係の手続きなどをやってくれて助かっていますが、成年後見人ができないこともあると聞きました。どのようなことでしょうか?
A 成年後見制度とは認知症や知的障害によって判断能力が不十分な人のかわりに、成年後見人が財産管理や契約、法的手続きを行う制度です。
成年後見制度において、支援をしてもらう人を「被後見人」、支援をする人を「成年後見人」と呼びます。成年後見人は被後見人のために財産管理や身上監護を行いますが、一方で下記の行為は行うことができません。
事実行為
成年後見人は、財産管理および身上監護を行うこととされており、事実行為を行うことを想定していません。
事実行為とは、被後見人の生活や健康管理のために直接的に行う行為であり、具体的には「日用品の買物」「掃除や洗濯などの家事」「介護や入浴介助」などです。
被後見人が認知症などで支援を必要としているのであれば、成年後見人が直接行うのではなく介護タクシーの手配や介護サービスの利用契約を結ぶなどをしてサポートをします。
身分行為
成年後見人は身分行為と呼ばれる法律上の身分関係の効力を発生、変更、消滅させる行為を被後見人のかわりに行うことはできません。例えば「養子縁組」「婚姻届や離婚届の提出」「子の認知」などで、他にも「遺言書の作成」も成年後見人が代理して行うことはできません。
医療行為の同意
入院手続きのサポートなどは成年後見人でも行えますが、「手術など苦痛や危険を伴う医療行為への同意」「延命治療の拒否や中止」「臓器提供の意思表示」などは、成年後見人は本人に代わって同意することはできません。
日常生活上の消費の取り消し・同意
被後見人が日常生活を営む中で購入したものに関しては、成年後見人が同意や取り消しを行うことができません。これは、「本人の意思を尊重するため」「日用品の購入金額は高額ではないため」というのが理由です。
被後見人の保証人になること
成年後見人は、被後見人のかわりに行動する役割を持つ人物であるため、「病院への入院や施設入所時の保証人や身元引受人」や「債務の保証人」などになることは想定されていません。
また、下記のような行為は、すべてのケースで認められるわけではありません。
被後見人の自宅売却
成年後見人が被後見人の自宅を売却するときには、家庭裁判所に「居住用不動産処分許可」の申立てをしなければなりません。自宅の売却は被後見人にとって影響度が大きく、個別の判断が必要と考えられるからです。
また、売却だけでなく施設入所して空き家になった自宅を他人に貸し出す場合なども、家庭裁判所の許可が必要です。
被後見人の死後事務手続き
成年後見人は被後見人の死後に事務手続きを行うことはできず、原則として相続人が行うものとされています。
なお、相続人が相続財産を管理できる状態に至っていない場合などには、例外的に家庭裁判所の許可を得て「遺体の引き取りや葬儀手配」を行うことができます。