ひまわりコラム

相続放棄をしても不動産管理義務が残る?

Q 1か月前に、田舎の実家で一人暮らしをしていた母が亡くなりました。
母の相続財産は、住んでいた土地と建物で、他に相続財産はありません。
実家の不動産は買い手がつく見込みも低そうで、私は相続放棄を検討していますが、どのようなことに気を付ければいいでしょうか?
なお、私が相続放棄を行った場合、他に相続人になる人はいません。

A 相続放棄と不動産管理

相続放棄をすればプラスの財産もマイナスの財産も引き継がなくて良くなるため、全ての責任から解放されると考える方が多いと思います。
しかしながら、相続放棄をしたからといって全ての責任から解放されるとすると、誰も管理しない土地や建物などが地域に増えることになります。そうすると、空き家が老朽化して崩れたり、動物に荒らされたりするなどのトラブルが発生する可能性があります。
そこで以前は、下記のような場合、相続放棄を行っても管理する責任がありました。

  • 相続人が1人しかいない場合には相続財産管理人を選ぶまで空き家の管理義務あり
  • 複数の相続人が全員相続放棄した場合も相続財産管理人が管理を始めるまで管理義務あり
  • 管理義務がある場合には空き家を放置し損害が生じた場合も責任を負う

このように相続放棄しても管理義務が残り、その義務から免れるには「相続財産管理人」の選任という手間がかかっていたため、いらない実家や山林が残された相続人が相続放棄をすることに二の足を踏む要因となっていました。

2023年 ルール変更により管理義務の対象者が明確に

そこで、2023年4月に民法が改正され、管理責任を負う者は、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している者」に限られることになりました。
逆に言えば、相続放棄の時に、相続財産を現に占有していなければ管理責任を負うことはないという点が明確になったのです。
例えば、既に自分は暮らしていない実家や、自分が管理や支配をしていない空き家・山林などは、「現に占有している」とはいえず、相続放棄後も管理責任を負わない可能性が高いといえます。
ただし、定期的に実家に帰って管理をしていたなどの事情があれば、「現に占有している」と評価される可能性はありますので注意が必要です。

管理義務が残る場合

もし、「現に占有している」者が相続放棄を行った場合には管理義務が残り、損害賠償請求を受けたり、近隣住民とのトラブルが起こったり、特定空き家に指定されてしまうリスクが発生します。
管理義務を免れ、そのリスクを回避するためには家庭裁判所に「相続財産清算人」(管理人から清算人へ名称変更)を申し立てる必要があります。
相続財産清算人とは、被相続人の債権者に対し債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させる人です。空き家であれば、まずは売却などを検討し、それが難しいなら土地を国庫に帰属させる手続きをとります。相続財産清算人に遺産を引き継げば、現に保有している遺産の相続放棄者であっても遺産の管理をしなくてもよいことになります。

相続財産清算人の選任

相続財産清算人は、利害関係人又は検察官が選任を申し立てることができ、相続放棄をした人は利害関係人に該当します。申立には、20万円~数十万円程度の「予納金」を払わなければならない可能性があり、それは申立人が負担することとなります。
ただ、相続財産清算人の選任申し立てを行わずに放置しておくと、倒壊の危険があり第三者に怪我をさせるなどの結果を招いてしまう可能性がある場合は、予納金程度の負担では収まらない危険がありますので、相続財産清算人の申し立てを行うことが推奨されます。

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