取締役が認知症に・・
2024年6月4日更新
Q 私が代表取締役をつとめる株式会社の取締役が認知症になり、そのご家族の方から「成年後見人をつけたい」という話がありました。後見人がつけられると、取締役でいられなくなると聞いたことがあるのですが・・
令和1年の会社法改正までは、取締役になる資格のない者(欠格事由)として成年被後見人、被保佐人が規定されており、成年後見の手続きをとることによって、取締役の地位が剥奪されていました。
欠格事由の存在が、判断能力が劣った人たちについて、社会生活の権利を奪ってしまっていいのかという議論や、欠格事由のために成年後見の申立てを躊躇するという問題もあり、成年被後見人や被保佐人も取締役になることができるように会社法が改正されました。
Q そうすると、今現在取締役になっている場合、被後見人はそのまま取締役を続けることができますか?
そのまま取締役を続けることはできません。被後見人になったことのみで、取締役の地位を失うことはありませんが、民法上の委任の終了事由に該当し、委任関係が終了することにより退任することとなるからです。
ただ、退任した被後見人を株主総会で再度選任し、被後見人の同意を得た上で後見人による代理の就任承諾により取締役となることもできます。
Q 被後見人を取締役に選任する場合の注意点はありますか?
被後見人が行った「個人としての行為」は無効にできますが、「取締役の資格に基づく行為」は、取り消すことができませんので、そのことにより仮に第三者等に不利益が発生した場合には、会社はその責任をとらなくてはなりません。
つまり、被後見人が個人として買った物の契約は無効にできますが、取締役として契約した場合は無効に出来ないということです。
当人の残された能力を会社のために発揮してもらうというプラスの面と、取締役の行為にともなうリスクは会社が負うことになるというマイナスの面を両方よく検討して、会社の制度設計や役員選任を考える必要があります。
◇成年後見制度はそのご本人の判断能力により3段階に分かれています。
- 成年後見…常に判断能力がない人
- 保佐…判断能力が著しく不十分な人
- 補助…判断能力が不十分な人