相続人が誰もいない場合は?
2024年5月21日更新
Q 私は一人っ子で、両親は既に他界しています。独身で子供もいないので、最近終活を考えるようになりました。自分が死んだら、親から相続した不動産や現預金などはどうなってしまうのでしょうか?
相続人が誰もいない(相続人不存在)の場合は、生前に遺言で財産をもらうと指定されている人、亡くなった人と特別な縁故があった特別縁故者が財産をもらうことになります。 分与しきれなかった財産がある場合や、そのような人がいない場合には、遺産は国のものになります。
解説
相続人がおらず、遺言もない場合、残された遺産は利害関係者の申立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産清算人」が整理をしていきます。本当に相続人がいないかを確認し、被相続人に借金や未払いの税金があれば支払いをし清算をします。この時点で遺産が無くなれば手続きは終了となります。
残余財産がある場合は、下記の様な「特別縁故者」がいれば、その者から相続財産分与の申立てがなされると、家庭裁判所の判断に基づき、相続財産を分与します。
特別縁故者として認められるのは下記の様な方々です。
①被相続人と生計を同じくしていた人物
婚姻届を提出していないものの夫婦関係と同等の生活を送っていた内縁関係にある人や、事実上の養子関係にある人などを指します。
②被相続人の療養看護に務めた人物
被相続人の看護や介護などをしていた人も特別縁故者として認められる可能性があります。しかし、業務として報酬を得ていた看護士・介護士・家政婦・付添人などは除かれます。
③被相続人と特別の縁故があった人物
遺言がなくても、被相続人から「自分が死んだら◯◯を譲る」などと約束を交わしていた人や、親子同然の師弟関係のように、生前は親密な関係にあった人も認められる可能性があります。
また、公益法人・学校法人・地方公共団体・宗教法人・権利能力がない団体なども、特別縁故者として認められる可能性があります。
特別縁故者に相続財産を分与しても残余財産がある場合には、そのすべてが国庫に入ります。昨今、亡くなるときに相続人がいない高齢者が増えており、2022年度は約766億円が国庫に帰属され、これは10年前の約2倍となっています。
もし、先祖から受け継いだ財産や自分が築いてきた資産を、これまでお世話になった人に託したい、応援している団体の活動支援に使ってほしいなどの想いがあるのであれば、遺言書を作成することをお勧めします。なお、遺言書を作成する際には、執行手続きを速やかに進めるためにも遺言執行者の指定も忘れないようにしましょう。また、社会に貢献したい、お世話になった学校や地域のために役立てたいという場合は、遺贈寄付という選択肢もあります。