自分の住所氏名を隠して裁判を起こせる?
2023年12月13日更新
Q 暴行事件の被害者となってしまいました。加害者に損害賠償請求をしたいのですが、報復されるのが怖くて躊躇しています。何かいい方法はないでしょうか?
裁判を起こす場合、原則として訴状に当事者の住所と氏名を記載する必要があります。
そのため、暴行事件等の被害者が、加害者に対し、自分の氏名等を知られることをおそれ、損害賠償を請求する訴えを躊躇しているのではないかとの指摘がありました。
このような場合のために、令和5年2月20日の民事訴訟法改正により、氏名・住所等の秘匿制度が新設されました。
改正法施行後は、住所や氏名を相手方に知られることによって「社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることにつき疎明があった場合」には、裁判所はそれらを秘匿する旨の決定をすることができるようになりました。
この要件を満たせば、自分の住所や氏名を相手方に伏せたまま裁判が起こせるようになったのです。裁判所の秘匿決定が出た場合は、「代替氏名A」などと呼称され、匿名のまま裁判が進み、判決書も匿名で記載されます。そして、財産差し押えなど強制執行も匿名のまますることができます。
この氏名・住所等の秘匿制度は、家事事件手続法にも準用されているため、家事事件にも適用されます。ですから、たとえば、夫のDVから逃げて引っ越した妻が、引っ越し先の住所を隠したまま離婚調停を起こすような場合にも使うことができます。