不動産を売却して相続人で分けたい場合(換価分割)
2023年9月6日更新
Q 相談
父が亡くなり、母は既に他界しているので、私と弟で相続手続きをすることになりました。
父名義の預貯金はほとんどなく、父が住んでいた土地建物が相続財産となります。
私も弟も住む家はあるので、この土地建物を売却し二人で均等に分けようと思っていますが、何か注意することはありますか?
A 回答
このように相続した不動産等を売却して金銭に換え、この金銭を相続分に応じて分割する方法を換価分割といいます。メリット、デメリットは下記の通りとなります。
メリット
①公平に分割できる
換価分割を利用すると、不動産を売って得られたお金を1円単位まで細かく計算して相続人間で分配できるので、完全に公平に遺産を分け合うことができます。
②不動産維持管理が不要になる
換価分割すると、不動産を売却してしまうので、不動産の維持管理が不要になって手間が省けますし、固定資産税などの負担もなくなります。
デメリット
①相続人全員の同意が必要
相続財産は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有状態にありますので、相続財産の売却には相続人全員の同意が必要です。生まれ育った実家が相続財産となっている場合には、売却に反対する相続人がいるために売却できないということも珍しくありません。
②相続財産を売却する手間と時間がかかる
換価分割を行う際には、相続した不動産や株式を売却する手間と時間がかかります。
特に、不動産売却は3~6ヶ月程度かかるケースも多く、買主との条件交渉なども必要です。
③売却益に譲渡所得税がかかる
相続財産を売却して利益を得た場合には、譲渡所得税がかかります。
なお、換価分割であるかどうかに関わらず、相続により空き家になった不動産について、相続人が一定の要件を満たして売却した場合には譲渡所得から3000万円を控除することができる「空き家特例」という制度があります。ただし、「相続があった日から3年後の年末までの間に売却したこと」「昭和56年5月31日以前に建築された建物であること」「相続してから売却するまで、賃貸に出したり、相続した人が住んだりしていないこと」など条件が厳しいため事前に確認が必要です。
事前に相続登記が必要
相続した不動産を売却する際には、亡くなった方の名義から相続人名義に変更する必要があります。その際遺産分割協議書という書類を作成するのですが、後日の現金の分配時に相続人間で贈与があったと判断される恐れがあるので、「換価分割である」旨の記載が必要となり注意が必要です。